2025年7月10日、AI検索サービスを手掛けるPerplexityが、待望のAI統合型ウェブブラウザ「Comet」を公開しました。この新しいツールは、「思考の速度でブラウジング」を標榜し、ユーザーがテキストや音声で指示を出すだけで、メール送信、コード作成、GitHubでの作業など、多岐にわたるタスクをAIが自動的に処理することを可能にします。これにより、従来のブラウジング体験とは一線を画す、圧倒的な効率性と利便性が提供されることになります。Cometは、Perplexityが長年培ってきたAI技術の粋を集めた成果であり、ウェブの利用方法に新たな変革をもたらす可能性を秘めています。
Cometのインターフェースは直感的で、Perplexity独自の検索エンジンが組み込まれており、情報をAIが要約しながら検索できる点が特徴です。さらに、ウェブアプリケーションを介した複雑な操作も、チャット形式で指示するだけで実行できます。画面の右側にチャットウィンドウを表示し、ウェブアプリの状況を確認しながら作業を進めることが可能です。AIが操作を行っている間は、ウェブアプリの表示エリアが青い枠で囲まれ、視覚的にその状況を把握できるよう工夫されています。
例えば、X(旧Twitter)では、Cometの具体的な使用例が動画で紹介されています。ユーザーが「自分に関連するLinkedInの投稿を見つけて」と指示すると、CometはLinkedInのタブを自動的に操作し、該当する投稿を瞬時に探し出します。このようなエージェント機能は、日常的な情報収集やソーシャルメディアの管理において、驚くほどの時間短縮を実現します。
また、開発者にとってもCometは強力な味方となります。コードの生成やGitHubのリポジトリ操作にも対応しており、ローカルで実行可能な「yt-dlp」ラッパーの作成を指示すると、CometはGitHubにリポジトリを作成し、コードを記述、コミット、プッシュする一連の作業を自動で行います。さらに、サイドカー機能を使えば、AIが生成したコードをその場で修正することも可能で、まるでAI統合開発環境(IDE)のように機能します。音声対話機能も搭載されており、ユーザーが自分の意図を声に出して伝えるだけで、Cometがその内容を理解し、適切な操作を実行します。
現時点では、CometはPerplexity Maxの有料プラン加入者向けに提供されていますが、将来的には無料ユーザーにも公開される予定です。対応OSはWindowsとmacOSですが、数ヶ月以内には他のオペレーティングシステム向けのバージョンもリリースされる計画があり、より多くのユーザーがこの革新的なブラウザの恩恵を受けられるようになることが期待されます。Cometは、AIとブラウジングの融合がもたらす、新たなデジタル体験の幕開けを告げる存在と言えるでしょう。
イケアは、自社のスマートホーム製品群において、これまで採用してきた通信規格ZigBeeから、新しい業界標準であるMatterへの大規模な移行を進めることを表明しました。この戦略転換は、製品の相互運用性を強化し、よりシームレスなユーザー体験を提供することを目的としています。今後、イケアのスマートデバイスは、アップル、グーグル、アマゾンといった主要なエコシステムと連携できるようになり、ユーザーは多様なブランドの製品を統合して管理することが可能になります。
この転換の背景には、2022年10月に正式にリリースされたスマートホームの共通規格「Matter」の登場があります。アマゾン、アップル、グーグルなどが参加するConnectivity Standards Alliance(CSA)によって策定されたこの規格は、IoTデバイス間の互換性の壁を取り払い、スマートホーム市場のさらなる発展を目指しています。イケアは、2023年に発売したスマートホームハブ「DIRIGERA(ディリゲラ)」が2025年7月に予定されているベータ版アップデートでMatter 1.4に対応し、Thread通信機能が追加されることで、この新しいエコシステムに本格的に参入します。これにより、20種類以上のMatter over Thread対応スマート照明、センサー、リモコンなどが市場に投入される予定です。
イケアのこの方針は、既存ユーザーの利便性も考慮しています。Matterブリッジとして機能するDIRIGERAハブを通じて、これまで販売されてきたZigBee対応製品もMatterベースのスマートホームシステムに接続できるようになります。さらに、ZigBeeの「Touchlink」機能がMatter対応の新製品にも導入されるため、新しいThread対応の電球を既存のZigBeeリモコンで操作するなど、旧製品との後方互換性が維持されます。これにより、すでにイケアのスマートホーム製品を導入しているユーザーも、安心して新しいシステムへ移行できる環境が整います。
製品ラインナップの拡充も計画されており、レトロなラジオ風デザインのBluetoothスピーカー「NATTBAD」が2025年7月に、照明機能付きテーブルスピーカー「BLOMPRAKT」が同年10月に発売される予定です。また、2026年1月にはスウェーデンのデザイナー、テクラ・セヴェリン氏とのコラボレーション製品も登場する予定で、デザイン性と機能性を両立させた製品が期待されます。
イケアの照明・家電担当マネージャーであるデイビッド・グラナート氏は、Matterへの移行理由として、相互運用性、使いやすさ、そして手頃な価格の実現を挙げ、標準化によってより多くの企業が開発を分担し、スマートホームの普及を加速させたいと語っています。しかし、この方針転換に対しては、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsなどで議論が巻き起こっています。Matterが「オープンな規格」と謳われつつも、認証制度によって閉鎖的になり、小規模メーカーやDIYコミュニティの参入障壁となる可能性が指摘されています。また、長年にわたりイケアのZigBee製品とオープンソースのスマートホーム基盤を組み合わせてきたユーザーからは、今回の変更が「裏切り」であるとの声も上がっており、一部のコミュニティでは複雑な感情が入り混じっています。
Googleは、世界的なデジタルインフラの要である海底ケーブル網の拡充を積極的に進めており、その最新の取り組みとして、アメリカとスペインを結ぶ新たな大西洋横断ケーブル「Sol」の敷設計画を公表しました。この戦略的な投資は、同社のクラウドコンピューティングサービス「Google Cloud」の性能と信頼性を飛躍的に向上させ、増え続けるデータ需要とAIサービスへの対応力を強化することを目的としています。このような大規模インフラ整備は、デジタル経済の発展を支える基盤として、国際的なデータ流通の円滑化に貢献します。
Googleは以前から、自社サービスの安定稼働を支えるため、世界各地で海底ケーブルの敷設を進めてきました。例えば、2022年に着工し、2023年に運用を開始した日本とカナダを結ぶ「Topaz」ケーブルもその一例です。これらのケーブルは、データセンター間の大容量かつ低遅延な通信を可能にし、Googleが提供する様々なデジタルサービスの品質を維持する上で不可欠な存在となっています。
今回発表された「Sol」ケーブルは、アメリカのフロリダ州パームコーストから出発し、大西洋を横断してスペインへと到達します。このルート上には、バミューダ諸島とアゾレス諸島が経由地として含まれており、既存の海底ケーブル「Nuvem」とも陸上経路で接続される予定です。これにより、北米と欧州間のデータ通信経路が多重化され、ネットワーク全体の冗長性と耐障害性が大幅に向上します。
「Sol」の導入は、Googleが展開する世界42のGoogle Cloudリージョンにおけるネットワーク容量と信頼性の強化に直結します。特に、アメリカとヨーロッパで急増するGoogle CloudおよびAI関連サービスの需要に対応するため、この新たな通信インフラが重要な役割を担うことになります。さらに、このケーブルはアメリカ国内で製造される予定であり、サプライチェーンの安定化にも寄与すると考えられています。
Googleは日本市場への投資も積極的に行っており、2024年には日本とアメリカを結ぶ新たな海底ケーブル2本の敷設に約1460億円(10億ドル)規模の投資を発表しています。これらの動きは、グローバルなデータ通信量が増大し続ける中で、企業が自社のデジタルインフラへの投資を強化し、サービスの安定性と拡張性を確保しようとする世界的な傾向を示しています。海底ケーブルの敷設には、高度な技術を要する製造工程と、専門の敷設船による緻密な作業が不可欠であり、その実現には膨大な時間とコストが投じられています。
Googleの海底ケーブル網への継続的な投資は、単に自社サービスの強化に留まらず、世界のインターネットインフラ全体の強靭化に貢献するものです。これらの取り組みにより、地理的な制約を超えた高速かつ安定したデータ通信が実現し、ビジネスから日常生活に至るまで、様々なデジタル活動の基盤がより強固なものとなるでしょう。今後も、このようなインフラ整備の動向は、グローバルなデジタル化の進展を測る上で注視されるべき重要な指標となります。